“賃貸住宅でDIYしたい人たち”についに遭遇!?
「DIY可能な賃貸住宅をつくりませんか?」
大家さんたちや不動産業界の仲間にそう提案すると「本当にそんなことしたい人がいるの?」「どんな人が借りてくれるの?」と聞かれることが多いです。
私はDIYで理想の部屋をつくりたい人を応援する賃貸マンション(ワク賃023)をプロデュースしているので、「結果としてこういう人が借りてくれました!」ということは言えるのですが、賃貸住宅でDIYをしたいと考えている人たちに会う機会は、これまであまりありませんでした。
そんな時に、YouTubeチャンネル「ZUBORA(ズボラ) DIY」で賃貸住宅でもできるDIYやインテリアの動画を発信し、DIYサークルを主催している滝口恵莉香さんと知り合うことができました。
そこで今回は、滝口さんとZUBORA DIY、そしてDIYサークルについてご紹介し、賃貸住宅でDIYをしたい人たちの実態を探りたいと思います。
こんな人たちに借りてもらいたい!
滝口さんと知り合ったのは、ワクワク賃貸の記事を見て、ワク賃023を取材したいとご連絡をいただいたのがきっかけです。
その取材をもとに作っていただいた動画がこちら!
そしてその時に、滝口さんに逆取材を申し込んだのでした。
現在24歳の滝口さんが、実家を出て初めて一人暮らしをしたのが20歳の時。おしゃれな部屋に憧れがありましたが、予算を考えると理想の部屋に住むのは難しく、自分で何とかできないかとYouTubeの動画を見て挑戦したのが、滝口さんの初DIYだったそうです。もともとDIYが好きだったわけではなく、お部屋を好きなインテリアにするための手段としてのDIYだったのですね。
その時にキッチンをDIYしてインスタに載せたところ評判が良かったので、次の引越し先ではDIYのビフォーアフターを動画で公開することを思い立ち、2019年1月にZUBORA DIYチャンネルが誕生したそうです。
初めて投稿した動画のタイトルは「ボロアパートのトイレを誰でも簡単に安くオシャレに」。プラダンにリメイクシートを貼り、タンクにはめてタンクレストイレ風にしたそうです。すごい!トイレットペーパーホルダーもDIYしたそうです。
ZUBORA DIYという名前の由来をお聞きしたところ、「インテリアに興味のある女性が簡単に挑戦できるDIYを紹介しているので、ゆるくやっているイメージを出したくてこのネーミングにしました」と滝口さん。
ゆる~くやりつつも、現在チャンネル登録数が12,000人超! 登録者は滝口さんと同じような、DIY好きの20代前半から30代前半の女性が多いそうです。
トイレのほかに引越し先で行ったDIYについてお聞きしたところ、これが管理会社もあっと驚く大胆なDIY。
「お風呂をおしゃれにしたくて、元々あった鏡を外し、壁に壁紙シールを貼って、その上からIKEAの鏡をアロンアルファで(!)貼り付けました。退去時に剥がすのが大変で、5時間もかかりました」
アロンアルファとはすごい発想! でも壁紙シールの上から貼ったので、時間はかかりましたがちゃんと原状回復できたそうです。
「トイレの床に100円ショップで買ったフロアシールを貼っていたのですが、退去時に剥がそうとしたらなかなか剥がれなくて、シール剥がしスプレーを使ってもベタベタが残り、元の床に色が写ってしまいました」
入居者さんが貼ったシールを剥がすのは管理会社としてよくあることですが、色移りしてしまうと元に戻せないため、原状回復費用が高くつくことがあります。既存の床材がちょうど張り替え時期だったのか、幸いにして原状回復費用を請求されることはなかったそうですが、いくらかかるのかドキドキだったことでしょう。
「当初は退去時に元に戻せば良いと思って、大家さんや管理会社には連絡せず、やばいDIYをしまくっていました。今は人に教える立場にもなったので、きちんと知識を得たいと考えています。賃貸DIYガイドラインの記事も熟読しました」
滝口さん曰く「やばいDIY」の原状回復の様子は次の動画をご覧ください!
管理会社としてはハラハラドキドキ、でもここまでして好きなインテリアにしたいなら、賃貸住宅に関わる私たちが何とかしなくてはと思いましたよ。
DIYサークルはどんなところ?何をやってるの?
滝口さんは、YouTubeチャンネルで動画配信される傍ら、DIYサークルも主催されているのですが、そのことについてお聞きしてみました。
コロナ禍になる前は、イベントに参加すればDIY好きな仲間と交流することができましたが、コロナでイベントがどんどん中止に。
そこで、ZUBORA DIYを手伝ってくれている薄井悠泰さんに相談し、自分たちでDIYコミュニティ作りをすることにしたのが始まりだそうです。
東京では4回目の緊急事態宣言中の2021年8月にDIYサークルは誕生。今ではメンバーが約40人! 滝口さんと同年代の一人暮らしの女性が多く、20代男性や30代の女性もいるそうです。活動は週1回で、オンライン交流やオフラインイベントを開催しておられます。
会費は月額制で1,200円と聞き、すごく安いですねと言ったところ「Netflixより高い」と言われることもあるとのこと。比較対象がNetflixなのがすごいというか、動画世代らしい言葉ですね。
DIYサークルに興味のある方は、下のバナーをクリックしてサークル専用サイトをご覧ください。
DIYサークルのメンバーがやりたいDIYは?
DIY可能な賃貸住宅を増やしたい私としては、DIYサークルメンバーの方がどんなDIYをしたいのかが気になり、滝口さんに質問してみました。
「インテリアが好きな人が多いので、壁や床を好みの色に変えたいという人が多いです」
壁紙シールや粘着シートを貼ったり、パネルを並べたりしているそうです。
「押入れをクローゼット風にしたいとか、1Rに扉をつけて1Kにしたいなどの相談もあります。でも賃貸住宅だと音が出るDIYはやりにくいですし、車がないとホームセンターのDIYスペースなども利用できないので、みんな苦労しています」
私自身も自分で車を運転しないので、車がない人のための木工DIYについて、DIY推進プロジェクトの以前の記事でも書きました。やはり悩みは同じですね。
DIY可能な賃貸住宅が求められている
サークルメンバーの方で、DIY可能な賃貸住宅に住んでいる方は現在1人もいないのだそうです。皆さん普通の賃貸住宅に住んで、原状回復することを前提に、音にも気をつけながら苦労してDIYしている姿が伺えます。
原状回復不要なDIY可能賃貸が増えれば、とても歓迎してもらえそうです。音だってある程度許容されますし、塗装など原状回復できないDIYも可能です。
へぇーっと思ったのは、狭い単身用の物件だと1年くらいでDIYする場所がなくなってしまうので、すぐ引っ越ししたくなってしまうとお聞きしたことでした。大家さんや管理会社としてはできるだけ長く住んで欲しいところですが、インテリア好きな人のお部屋は退去時もきれいな気がしますので、前向きに捉えたいところ。次に住んでくれるお友達を紹介してもらえるなどの仕組みを作れれば、空室期間も短くて済み、大家さんにも充分メリットがあるなと思いました。
DIYサークルメンバーとDIY
後日ワク賃023で開催されたDIYに、滝口さん、薄井さんと、DIYサークルメンバーの方が参加してくださいました。講師はもちろん、101号室にスタジオを構える合同会社クラディの石井麻紀子さんです。
皆さん、普段はYouTubeなどで調べながら自己流でDIYしているので、技術や知識をきちんと学びたいと意欲満々。
終了後、参加してよかったことをお聞きしたところ、プロの講師にDIYの便利アイテム、道具の使い方、きれいに仕上げるコツなどを丁寧に教えてもらえたこと、壁の塗装やコーキング、柄付きの輸入壁紙を貼るなど普段自分の住んでいる賃貸住宅ではできないDIYが体験できたこと、他の参加者の方と交流できたことなどを回答いただきました。
上手にDIYしたいという皆さんの思いが伝わり、こういう方々のためにDIY可能賃貸をもっともっと増やしたいと、強く思いました。
文:伊部尚子