映画やドラマを観ていて、人によって気になるポイントは違うんだろうなと思う。
脚本や演出、役者さんの演技、音楽などの「王道」だけでなく、女優さんが着ている服だとか、食べている料理だとか、そんな“ちょっとずれてる”ところが気になって仕方がないという人もいるだろう。
僕の場合、これはもう職業病だと思うが、主人公たちが暮らす家やインテリアがとても気になる。
「家は人なり」、住んでる家は主人公の性格や趣味趣向、生き方などを映し出す鏡みたいなものだといつも思っているが、映画やドラマの世界でもそれが言える。
逆に言えば、多くを語らなくても、住んでいる家で主人公のキャラクターをわかりやすく説明することができるのだと思う。
だから、あまりにわかりやすくて思わず笑ってしまうような、でもとても好感が持てる家が登場すると、僕は非常に楽しい気持ちになる。
最近観た中で、一番興味を持った部屋は2016年秋シーズンに放映された『Chef(シェフ)~三ツ星の給食~』で天海祐希演じる主人公・星野光子の部屋だ。
ドラマを観ていない人のために簡単に説明すると、三ツ星レストランで総料理長を務めていた星野光子が、オーナー経営者の陰謀でレストランを追い出され、小学校で給食をつくりながら再起を図っているうちに、給食づくりに夢中になっていく・・・という物語だったが、とにかく「料理をするのが好きで好きでたまらない」という星野光子が暮らしている部屋は見事にそのキャラクターを表現していた。
その部屋は居室の大半をアイランド式キッチンが占めていたのだ(※トップのイラストがそのイメージ)。
レストランの厨房としても通用する大きなキッチンが家の真ん中にドカンとあって、バジルなどを栽培するパントリーや大きなワインセラーなどがあって、ベッドはその片隅にチョコンとある。
その潔さは実に見事だ。
ネットで調べたら、星野光子は分譲マンションを買って、自分の好きなようにリノベーションしたという設定になっているらしい。
確かに賃貸でこれはないだろうなあ・・・
と思ってはみたが、いやいや、どうして、賃貸でこんな部屋があったら、すごく人気を集めるんじゃないだろうかと思えてきた。
「万人受けするようにつくったほうが稼働率は高くなる」と考えるオーナー様やハウスメーカー、管理会社が多いためか、賃貸市場はありきたりの家であふれかえっている。
でも万人受けする物件ばかりだと、どれを選ぶかという基準は駅からの距離であったり、築年数の浅さだったり、そんなことだけになってしまって、その条件で負けた物件はずっと空いたまんまとなる可能性がある。
だったら、ちまたにいる星野光子みたいな料理が大好きな人のハートをわしづかみにする部屋をつくったら、駅から多少遠かろうと、古かろうと、間違いなく選ばれる物件になるはずだ。
空室率が20%とも言われる時代、ドラマ『Chef』の部屋みたいに大胆で潔い賃貸住宅をつくっていかなきゃダメなんじゃないかと思う。
いや、そんな切羽詰まった気持ちだけじゃなく、ある人にとってはワクワク楽しくてたまらない賃貸住宅が増えていったら社会がとても豊かになっていく気がする。
そこまで言ったらちょっとオーバーだろうか(^^;
後日「ドラマ『Chef』の部屋」の妄想・アイディアは本当に実現できるのかを「ワクワク賃貸®研究所」でトコトン検証しました。
下記リンクから研究レポートをご覧いただけます。
文責:久保田大介
イラスト:コミック堂