《 ワクワク賃貸妄想中 》Vol.036

ユーザーの声を聴く

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コンセプトがある賃貸住宅づくりはユーザーの声を聴くところから始まる

中古戸建てをコンバージョンしたアクアハウス第1号

「ワクワク賃貸」は、“毎日ワクワク、楽しみながら暮らせるコンセプトがある賃貸住宅”が日本中に増えていくことを願い、情報発信しているウェブマガジンである。
エッジのとがったコンセプトの賃貸物件をつくることは僕の会社の大事な事業のひとつで、この事業に取り組む際は、コンセプトのメイン・ユーザーとなる人たちの“生”の声を聴くことがとても重要だと思っている。
しかし「ちゃんと聴かなければ!」と強く思うようになったのは、3年ほど前からなので、比較的最近の話だ。それまでも無視していたわけではないけれど、重く考えてはいなかったように自覚している。
「ちゃんと聴かなければ!」と思い始めたきっかけは、水槽をたくさん並べて熱帯魚や爬虫類、両生類などを思う存分飼育できる賃貸住宅「アクアハウス」の新築企画会議を開いたとき、参加くださったユーザーからの、ある提案だったように思う。
アクアハウスは新築プロジェクトを開始する前にも、中古の戸建て住宅をコンバージョンして貸し出していた。そしていよいよ新築を始めようということになり、中古戸建てを借りてくださっていた入居者夫婦にも参加いただき、オーナーのMASAさん(熱烈なアクアリストでもある)主催の企画会議を開いた。
その日、最初は必要な環境や設備について話し合われていたのだけれど、お酒が入っていたこともあり、途中から珍種の熱帯魚や爬虫類の話で盛り上がり始めた。
アクアリストではない私も、はじめのうちはニコニコ笑いながら聞いていたのだが、それが2時間も続いたものだから、少々疲れた顔をしていたら、それを見とがめた入居者さんから、「久保田さんは僕たちのことを変わった人間だと思っているでしょう?」と言われてしまった。
でも確かに“変わった人たち”とは思っていたので、素直に「ええ」と答えると、「来週から池袋のサンシャイン60で『東京レプタイルズワールド』というイベントが始まります。それに是非行ってみてください。久保田さんの認識がきっと変わると思いますよ」と提案してくださった。
サンシャイン60は僕のオフィスのすぐそばなので、翌週、そのイベントに行ってみた。
するとまあ驚いたの何の・・・。

「東京レプタイルズワールド」の看板

「東京レプタイルズワールド」でヘビを首に巻く女性

大きなイベント会場をたくさんの爬虫類ファンが埋め尽くし、来場者は男性ばかりだと思いきや、若い女性も、小さな子どもも、老夫婦もいて、ヘビを首に巻いたり、トカゲを手に取ったりして大はしゃぎしている。
この様子を見て、目から鱗が落ちまくった。自分が全く知らない世界がそこにあり、熱狂している人たちがこんなにも大勢おられる!
そのことを入居者さんに報告すると、「わかっていただけて嬉しいです(笑)。でも、皆さん、けっこうこっそり飼っているんですよ。水槽をいくらでも並べていいという住宅は少ないですから。だから久保田さんたちのやられている事業は貴重なんです」と言われた。
この言葉には強く胸を打たれた。ユーザーさんたちのことをもっと知らなくちゃ!どんな要望があるのかももっと聴かなくては!そう決意した出来事だった。

武蔵野美術大学関係者とのブレーンストーミング

武蔵野美術大学 美術館の外観

それ以来、新しいコンセプト賃貸物件づくりに携わる際は、意識的にエンド・ユーザーの“生”の声を聴くようになった。
ブログやYou Tube動画などでもユーザーの趣向をつかむことはある程度できるので、それも怠りはしないが、しかし直接聴いたほうが、ずっと奥深く把握できることは体験上わかっている。
いま僕は「アトリエ賃貸推進プロジェクト」と「菓子製造許可が取れる賃貸住宅」という2つのコンセプト賃貸物件づくりに取り組んでいるが、ここでも取材を通してユーザーの話を伺うよう心がけている。

このうち「アトリエ賃貸推進プロジェクト」では武蔵野美術大学周辺に多くの土地を所有している地主さんから、アトリエ付き賃貸住宅(=アトリエ賃貸)の新築を相談されているが(Vol.21の記事を参照していただきたい)、2022年7月下旬には武蔵野美術大学の職員さん、大学院生さん、学生さん、大学出身の美術作家さん、アート・コーディネーターさん、東京アトリエさがしの兼松信吾さんにお集まりいただき、オーナーさんと私をファシリテーターとするブレーンストーミングを開催した。
ここではアトリエ賃貸に望む間取り、広さ、設備、サービスなどを自由に発言していただいたのだが、ほとんどの方たちが初顔合わせだというのに、盛り上がること、盛り上がること。こんなに多くのリクエストがあるのだと感動してしまった。
さらには武蔵野美術大学が取り組んでいる事業、周辺エリアの情報、卒業生たちの動向(いかにアトリエさがしに苦労しているかなどの話)を伺うことができ、実りの多い一日であった。

“生”の声を聴く機会を増やしたい

こんな具合に、どのようなコンセプト賃貸物件をつくる場合でも、ユーザーの“生”の声はできる限り多く聴くよう心がけている。
ユーザーばかりでなく、その業界の方・・・たとえば「人とネコとが快適に暮らせる賃貸住宅」づくりに関わったときは、猫ホテルや保護猫カフェの運営事業者に詳しくお話を伺い、事業にも協力していただいたりした。
ただ、聴けば聴くほど、奥が深いことがわかってきて、まだまだ足りないのではないか、もっと聴けたらもっと良い物件がつくれるのではないか、という想いが募ってくる。
キリがないと言えばそれまでだけれど、ユーザーの“生”の声を聴く仕組みを上手につくれば、もっと楽にたくさんの声が聴けるようにも思うのだ。
たとえば当該コンセプトで空き待ち登録をしてくださっている方たちに呼びかけて、オンライン・ミーティングを開催させていただくとか、「ワクワク賃貸」のFBページ内にグループをつくって、常時意見を交換し続けるとか、いろいろとやれることはありそうだ。
「えっ?そんなの当たり前」、「まだやってないほうがどうかしてる」なんて声も聞こえてきそうなのだが、どれぐらいニーズがあるのかが見えないので、二の足を踏み続けている。始めたら継続していくことも大事だから、どうしても慎重になってしまう。
こういう場をつくったら、はたして読者の皆さんは参加してくださるのだろうか?

文:久保田大介

  • この記事を書いた人

久保田 大介

『ワクワク賃貸®』編集長。有限会社PM工房社・代表取締役。 個性的なコンセプトを持った賃貸物件の新築やリノベーションのコンサルティングを柱に事業を展開している。 2018年1月より本ウェブマガジンの発行を開始。 夢はオーナーさん、入居者さん、管理会社のスタッフさんたちがしあわせな気持ちで関わっていけるコンセプト賃貸を日本中にたくさん誕生させていくこと。

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