今回のコラムは、コレクティブハウスの新しい居住者を募集する方法についてご紹介したいと思います。
普通の賃貸物件とは違い、管理会社や仲介会社という存在がないコレクティブハウス。自主運営ですから、新しい居住者を集めることも、居住者組合が主体的に実行することになります。しかし、居住者たちだけで募集活動ができるわけではないため、運営支援に入ってくれているNPO法人コレクティブハウジング社(以下「CHC」)や大家さんとともに行っています。
私たちの居住者募集活動は大きく分けて3つあります。
1つめは、居住検討者を対象としたコレクティブハウス訪問(定期的に開催)。2つめは、コレクティブハウスを知ってもらうための地域での活動。3つめはWEB・SNSを中心とした広報活動です。
今回はこのうち1つめのコレクティブハウス訪問についてご紹介します(残りの2つは次回紹介します)。
居住検討者を対象としたコレクティブハウス訪問
コレクティブハウス訪問の内容について、ここでは「コレクティブハウス聖蹟」を例にご紹介します。
簡単に言えば、居住を検討してくださっている方に実際に建物を見学していただき、暮らしの仕組みについて説明をするという方法で、CHCの担当コーディネーターと協働で開催しています。
建物見学は現在の居住者たちが一緒に周り、どのようにコモンスペースを使っているのかを見ていただき、生活のイメージをしてもらいます。
暮らしや仕組みについては居住者が説明をしていき、続いてCHCの役割や大家さんとの関係性などの話についてCHCのコーディネーターからお話をしてもらいます。
コレクティブハウスを訪問していただく前段階として、どんな暮らしを実現したいのか、という想いを伺い、コレクティブハウスとはどういった暮らしなのかをお伝えするオリエンテーションがあります。これはCHCにて実施しています。
コレクティブハウス訪問は、コロナ感染拡大防止のため、ZOOMを使ったオンラインで開催をしていた時期もありますが、現地まで来ていただき実施することを基本としています。
「コレクティブハウス聖蹟」では案内や説明をする役割を当番制にしています。開催する日によって案内担当も説明担当も変わります。説明する人が違えば、話の内容も多少変わります。また、開催する季節によってコレクティブハウスの状況も違います。そのため、均一な情報をお伝えはしておらず、当日対応した居住者が説明できることを、その時に伝えられる情報としてお届けしています。
説明だけでなく、質疑応答の時間には当番以外の居住者にも集まってもらい、実際に居住者の顔を見ながら話をする時間もとっています。
コレクティブハウス訪問で実際にお話をすることで、現在の居住者側でもどのような人が居住を検討されているのかがわかります。
すでに入居している居住者も新しく居住したいという方も、お互いのことをある程度知った上で新たな暮らしを始められる仕組みがあることは大事なことだと思います。
普通の賃貸物件のように仲介会社や管理会社が案内をして入居者を決めるという仕組みではなく、そこで暮らしている居住者たちが案内をして物件を紹介する。検討している方が希望すれば、コレクティブハウス訪問後にコモンミールに参加したり、より具体的な意思決定の場である定例会などの様子も見てもらいます。暮らしのイメージを具体的につかんでもらう段階を経て、居住を決めてもらうのです。
もちろん、居住し始めたら、「思っていた暮らしと違う」ということもあると思います。コレクティブハウスに対する期待が大きければ大きいほど、思い描く理想と現実のギャップに苦悩する方もいるとお聞きします。
それでも、ここでの暮らしを希望し入居を決めたのは、段階を経て意思決定をした自分自身です。
「コレクティブハウス聖蹟」は賃貸ですから、違う暮らしをしたくなれば退去する、という選択肢をとれば良いのです。誰かによって決められるわけではありません。その自己決定を尊重する暮らしである、ということだと私は思っています。
この連載を読んで、実際にどのような暮らしをしているのだろう、と興味を持ってくださっている方も多いと思います。すぐにコレクティブハウスに入居するという選択は今のところないけれど、将来のためにもっと知りたい、という方のためには見学会も開催をしています。こちらもCHCと共催しているものです。
見学会はコレクティブハウス訪問と同じように建物の案内も行います。現在は感染拡大防止のため、基本的にオンライン対応ですが、実際に案内をする順番で録画をした映像に合わせて案内担当の居住者がナレーションを入れています。
コレクティブハウス訪問も見学会も、実際に暮らしている居住者がリアルな話をお伝えします。私以外の話を聞きたい、という方はぜひお問合せください(※「見学希望」とメッセージを添えて「空き待ち」登録をしてくださったら、編集部が私につないでくれます)。
次回は、居住者募集の一環である地域の活動をご紹介したいと思います。
文:久保有美