新型コロナウイルス禍のさなか、入居者さん同士のコミュニケーションを重視したコミュニティー賃貸住宅でもイベントが相次ぎ中止されています。
そんな折、自然素材で建てられ、全5戸に家庭菜園とペレットストーブが付いている物件としてメディアで数多く取り上げられてきたコミュニティー賃貸・「ワク賃011」では例年通り秋の恒例イベント「サンマ・パーティー」を行うという情報を入手。旬のサンマをバーベキュースタイルで一緒に食べるとのことで、この機会に「コミュニティー賃貸とコロナ」という切り口で是非お話を伺いたいと思い、家主兼管理会社の株式会社ミヤケンさんにアタック。今秋はサンマが高騰していたことから「サンマのスポンサーを務めます!」という条件を提示し熱心に依頼しましたら、入居者様全員が快諾くださいました。
今回は、「サンマ・パーティー」の模様を写真でお伝えしつつ、
新型コロナウイルスがコミュニティー賃貸へ与えた影響
コミュニティー賃貸での子育て
「ワク賃011」への入居を決めた理由
の3つの観点から、入居者さんたちの生の声をお届けしたいと思います。
新型コロナウイルスがコミュニティー賃貸へ与えた影響
新型コロナウイルスが「ワク賃011」に与えた影響についてお伺いする前に、入居者さん同士が日頃、どのような付き合い方をしているかということからお訊ねしました。
コミュニティー賃貸と一口に言っても、物件ごとに入居者さん同士の距離の取り方は異なります。
「ワク賃011」では普段どのような距離感で交流されているのでしょうか?
ほかのコミュニティー賃貸住宅のことはよく知りませんが、私たちはかなり親しくお付き合いしているほうだと思います。たとえばこの物件には玄関に網戸がついているのですが、冬以外は扉を開けっぱなしにしている家が多いです。「いつでもウェルカム」という感じがして、とても気に入ってます。
私は自宅で仕事をしているのですが、ちょっと休憩したくなったときや誰かと話をしたくなったとき、外に出ると玄関が開いているからとても便利。どの家に誰が遊びに来ているのか、すぐにわかりますから(笑)。
私は妊娠中、ほかの家に遊びに行っているとき産気づきました。初めての出産でしたから、家にひとりでいたらかなり不安だったと思うんですが、そばに出産経験のある先輩ママがいてくれたので心強かったです。
ここでは子どもたちを一緒にお風呂に入れることが多いです。0歳児の入浴が得意な奥さんがいて、しょっちゅうお世話になってます。
子どもがほかの家でお風呂に入ってきた日は、自宅でお風呂を沸かさず、シャワーで済ましてしまう日も多いです(笑)。
「ワク賃011」はイベント開催日だけでなく、普段からとても親密に交流していることがよくわかりました。しかし「ソーシャル・ディスタンス」の必要性が強調されるなか、このコミュニティーはどのような影響を受けたのでしょうか?
今日の「サンマ・パーティー」は秋の恒例イベントなのですが、普段も一緒に食事をすることが多いです。“ステイホーム”となってからは在宅ワークする方が増えたので、いっそうその頻度が増してきて・・・。朝食を庭で一緒に食べ、散歩をしてからお昼も一緒に食べ、少し休憩してから子どもたちを公園に連れて行き、そのあとみんなで夕飯も食べるなんて日も少なくありません。コロナになってますます“密”になった気がします(笑)。
家に帰ったらマスクをはずすのが普通だと思うのですが、ここは全体がひとつのファミリーみたいなものだから、みんなで一緒にいるときもマスクなしで過ごしています。だからイベントを中止にする必要が全くありません(笑)。
インタビュー中、どなたもマスクをしていないことに気づいてはいたのですが、「コロナ以降、ますます“密”になった」という話にはビックリしてしまいました。この点をもっと深堀りしていきましょう。
うちともうひとつのお宅は今年子どもが産まれたばかりで、現在育児休暇中。だからテレワークでなく、普通に家で過ごしているのですけど、外出はできないし、病院でも感染に注意しなくちゃいけないから、「ワク賃011」のおかげで育児ノイローゼにならずに済んでます。
我が家は最近夫が病気(※注 コロナではありません)で入院していたのですが、もしここに住んでいなかったら、コロナでほかの人たちとも交流できず、不安でたまらなかったと思います。毎日みんなに話を聞いてもらって、励ましてもらえて、本当に心強かったです。
世間では“コロナ鬱”なんて言われているようですが、ここはそんなこととは無縁。これまで通りどころか、これまで以上に話をするようになって、コロナ鬱なんて感じたことがない(笑)。
新型コロナウイルスの感染拡大以降、オンライン飲み会が流行りましたが、「ワク賃011」では“生身”でより親密に接していたわけですね。出産や育児、ご家族の病気という悩みも、ここに住んでいたから深刻にならずに済んだ。皆さんにとってますます大切なものとなったことがよく理解できました。
コミュニティー賃貸での子育て
つづいて、「ワク賃011」というコミュニティー賃貸での子育てについて、皆さんにお話を伺いました。普通の賃貸住宅とはどのような違いがあるのか、興味津々です。
大人同士はお互いをあだ名で呼びあっていて、子どものことは名前で呼んでます。でも困ったことに、子どもたちも親の真似をして、大人をあだ名で呼ぶんです。これはもう仕方がないですね~(笑)。
我ながら面白いなと思うのですが、どこかで子どもが夜泣きをしていると、泣き声で誰だかわかるんです。泣き声にも特徴があるんですよ。ここで暮らすまで、そんなこと考えたこともありませんでした。
ほかの家の子どもたちがうちに遊びに来ていて、ふと気づいたら自分の子どもがいない、なんてことがしょっちゅう(笑)。子どもたちは親以上にフリーパスで、どこの家にも入っていっちゃうんです。
子育て中のご家族が多いので、聞くほどに話がどんどん弾みます。皆さんの話を聞いている最中に、2歳と1歳の子が代わる代わる私の膝の上に乗ってきました。人なつっこくてとてもかわいいです。
最初の子を出産した日はみんなでバーベキュー・パーティーをやっていたのですが、準備中に突然産気づいてしまいました。早く病院に行かなくちゃ!と焦ったんだけど、先輩ママさんたちが「まだ大丈夫」と平然としているからそんなもんかなあと思って・・・。その後、何度痛みを訴えても、そのたびに「まだ大丈夫~」と笑顔で言われ、とうとうバーベキューも完食! 終わってから陣痛が10分間隔になってきて、そしたら「そろそろ行こうか」と言って車で病院に連れて行ってくれました(笑)。
産院もはじめはみんなバラバラだったんです。でも情報交換しているうちにどこが一番いいかわかり、途中からみんな一緒になりました。情報交換は大切です!
入居者のなかには、保育士や歯科医師、管理栄養士、整体師などがいるので、それぞれの専門分野の見地から子育てについて教え合えるのがとてもいいです。ひとりではわからないことだらけだけれど、知識を補い合えるからありがたい。
お話を伺っているうちにわかったのですが、「ワク賃011」に現在住んでいる奥さんは、全員ここで最初の出産を経験されたようです。その都度、先輩ママさんがそばに寄り添い、助言をし、時には産院に連れて行ってくれた。出産後もみんなで情報交換し、一緒に子どもを育てている。何だかすごい話を聞いてしまったようです。
「ワク賃011」への入居を決めた理由
「ワク賃011」はコミュニティー以外に、「家庭菜園」、「ペレットストーブ」などセールスポイントの非常に多い物件です。私はペレットストーブに憧れているので、特にこれがどう使われているか是非聞いてみたいと思っていました。忘れないうちにこちらも聞いておきましょう。
ペレットストーブは、炎を見つめてゆっくり寛ぎたいときに使ってます。菜園で育てたバジルやレモングラスなどを使って入れたお茶を飲みながらボーっとしていると安らぎます。でも小窓がすすけるので、こまめに掃除をしないといけないのがちょっとしんどい(笑)。
子どもが起きているときは危ないから、ペレットストーブを使うのは夜、子どもが寝てから。でも疲れてしまって子どもと一緒に寝ちゃうときが多いので、あんまり使ってないかも。
うちも子どもがもう少し大きくなって、危ないかどうか自分できちんと判断できるようになってからペレットストーブは使おうと思っています。そんな日が来ることが今は想像できないけど(笑)。
菜園は、ご実家が農家だというご主人がいるので、野菜を育てるときは心強いです。ああしろ、こうしろとうるさくは言わず、聞けば何でも答えてくださるので助かってます。
「ワク賃011」に住むと決めたとき、親に「菜園があるんだよ」と言ったら、「それはいいね!」と大好評でした。自分より親のほうが喜んでいたように思います(笑)。
家庭菜園は初めてなので、先輩入居者さんに教えていただきながら、一品ずつトライしています。草むしりなども大変だけど、一緒にやっているおかげで楽しい気持ちのほうが強いかな。
「家庭菜園」も「ペレットストーブ」も、皆さんにとってはメインでなかったのが意外でしたが、子育て世帯にとってはそういうものかもしれませんね(苦笑)。
話は尽きませんが、最後にコミュニティー賃貸で暮らすことに不安がなかったのか、訊ねてみました。
私でしたら、「コミュニティーになじめなかったらどうしよう?」と不安に思ってしまうのですが、「ワク賃011」の入居者さんたちはその点を心配していなかったのでしょうか?
また「ワク賃011」に入居する決め手になったものは何だったのか、あわせて伺いました。
「ワク賃011」を案内されたとき、コミュニティーが充実している賃貸物件だということは聞いていましたが、ここまで濃いとは正直思っていませんでした。でも入居した日、最初にお会いした方がものすごい笑顔で「はじめまして~!!」と挨拶してくださって、自分でもびっくりするぐらいのスピードで溶け込むことができました。
私は家でも整体の仕事をするのでSOHO契約を希望していました。それを受け入れてくださるか心配してたんですけど、家主兼管理会社のミヤケンさんが「全然構いませんよ」と気さくな感じで言ってくださって、ありがたかったです。
これはうちだけじゃなく、皆さんそうだと思うのですが、「自然素材でできた家」という点が一番の決め手でした。子どものことももちろん心配ですが、私自身もアトピーがあって、その不安が解消されたのがとても大きかったです。
自然素材だけで作られているから、当然建築費も高かったはずで、その分、お家賃も少しお高い(笑)。正直、予算オーバーだったんですが、初めてここに来たとき、無垢材はもちろん、デザインの良さや菜園の緑に心を奪われてしまって・・・。駐車場代がほかより安かったから、「トータルしたら、そんなに高くないよ!」と言って夫を一生懸命説得しました(笑)。
妻のことを第一に考えたら、この家しかないと思いました。コミュニティーがマタニティーブルーや育児ノイローゼから救ってくれるだろうし、自然素材の家は体にもきっといいと思い、迷わなかったです。
入居者さんの生の声はいかがでしたでしょうか?
取材中はどの子がどのご家庭の子どもなのか全くわからないぐらい、大人たちが分け隔てなく子どもを抱き上げ、かわいがり、子どもたちは大人を全く怖がらないことに驚きました。
訊けば、ほかの場所にいるときはそうではないらしく、「ワク賃011」にいるときが特別なのだそうです。コミュニティーへの絶対の信頼感の表れなのでしょう。
子どもたち同士も友だちというより兄弟といったほうがピッタリで、多くのなかでもまれて育つことは、きっとこれからの人生に役立つはず。
入居者さんのなかに、近い将来、故郷に帰って田舎暮らしをすることを夢見ているご家族がおられたのですが、今はそれも見送り。ここでの暮らしをかけがえのないものと思い、「いつまで続くかわからないけれど、少しでも長くこのしあわせを味わっていたい」と言っておられたのが印象的でした。
屋外でサンマを堂々と焼いて食べられる環境もまた最高。自分自身がこの物件に「空き待ち」登録をしたくなりました(笑)。
文:久保田大介
写真:みのもけいこ